「元カノも、夏紀も、俺の母さんも・・・そして、ハルも。なんだかいつも最後は幸せな顔じゃないんだ。俺が幸せだって思った瞬間から、それは始まる。それってさ。やっぱ俺のせいだよね。俺の何かがおかしくて、それが結局近しい人をも狂わせるっていうかさ。」

アキは遠い目をした。

「自意識過剰。」

少しふらつく頭をフル回転させた。

「え?」

驚いた顔でアキが私を見る。

「そんなの自意識過剰だって言ってるんだよ。」

「どういうことさ。」

「誰も、アキのことばっか考えて生活してないって。心配事や悩みなんていくらだってあるわ。」

「ハルは、いつものほほーんとして幸せいっぱいって感じだったじゃんか。」

「ば、バカ言わないでよ。私だって、悩むことくらいあるっての。」

アキは、目を細めてくすっと笑った。

「あ、そうですか。失礼しました。」

アキが笑ってくれることが、今の私にはとても嬉しい。

「だから、そんなことで一々アキが悩むのは間違ってるって言いたいわけ。」

「今日はやけに優しいね。」

「いつも優しいし。」

私は笑った。

アキも目をそらしながら笑った。

「今まで偶然が重なってただけ。アキは気にしなくたっていいのよ。」

アキは優しい眼差しのまま、ゆっくりと近づいてきた。

ぼんやりとしているけど、すぐ近くにアキの息づかい。

過呼吸とは違う、息苦しさを感じた。

そして、アキは寝ている私の体をぎゅっと抱きしめた。