リビングテーブルの上に置いたままになっていた髪留めで後ろ髪を束ねた。

そして、慌ただしく玄関を飛び出した。

直太が帰ってくるまでに、アキを探そう。

そう心に決めて。



叔父さんの家は、電車とバスを乗り継ぐと、意外に早く着いた。

閑静な住宅街の一軒家。

表札を確かめる。間違いない、ここだわ。

そういえば。

アキのことだけ考えてここまで来てしまったけど、叔父さん叔母さんとしたら、直太のお嫁さんがどうしていきなり押しかけてきたのかって不審に思うわよね。

その時は、正直に仕事の話を伝えればいいか。

一呼吸置いて、インターフォンを鳴らした。

「はい。」

叔母さんらしき人の声を聞いた瞬間、あまりにリアルすぎて、今までの意気込みが少ししぼんだ。

早くなる鼓動から意識を必死に逸らす。

「あの・・・。突然すみません。井上直太の嫁のハルと申します。」

「へ?直ちゃんのお嫁さん?」

明らかに驚いている。

そりゃそうよね。

突然、しかも、大して面識もない直太の奥さんが一人で玄関先にいるなんて。