「絵が描けないって。何か気になることでもあるの?・・・優花のこと?それとも元カノのこと?」

できるだけ冷静に聞いてみる。

なぜだか胸騒ぎがする。

この先を聞いちゃいけないような、そんな気がした。

少しの沈黙の後、誰に言ってるかわからないような消え入りそうな声が聞こえた。

「・・・ハル、のこと。」

今、なんて?

「俺、自分でも訳わかんなくなっちゃってさ。とにかくハルの声を聞かないと落ち着かなくて。」

「ど、どうして?」

「ハルが、優花ちゃんのこと紹介するって俺に言ってきてから、何だか全然絵に集中できなくなって。そんなことより、もうすぐ元カノにきちんと話しなきゃなんないのにさ。」
 
息をするのが苦しくなってきた。

じっと呼吸を止めて、携帯の向こうのアキを思う。

アキは、今何を私に伝えようとしているの?

私が今まで必死で押さえ込んでいたものが、今にもあふれ出しそうだった。