「夏紀に聞いてたんでしょ。そういうこと。俺たちがプラトニックだったってこと。」

ここまで問いつめられたら嘘はつけない。

「うん。」

小さな声で答えた。

アキは、目線を窓の外に向けた。

「俺、ダメなんだよね。女性と接して好きになっても、なぜだかそういう関係に進むときに抵抗があって。自分の母親とオーバーラップするっていうか。特に夏紀の場合はそうだったんだよね。」

私はだまってうなずいた。

「小さい頃に母親が死んじゃったから、一緒に夜寝てもらった記憶がないんだ。だから、とにかく昔から夜が寂しくて寂しくて。叶わないってわかっていながら、何度も母親に抱き締めてもらいたくて泣いてたんだ。きっとそれが未だに続いてるんだろうね。寂しくて寝れない夜に夏紀に抱き締めてもらえたら、安心して眠れた。」

アキは、ウェイターさんを呼んでブラックを頼んだ。