原稿を小脇に抱えて、久しぶりに町に出た。

日差しがまぶしい。

最近家の中にこもってたから、たまに浴びる太陽光線は気持ちよかった。

とりあえず、郵送手配をしなくっちゃ。

カウンターで宛先を記入していると、横に圧迫感を感じる影が並んだ。

ちらっと横目で見ると。

・・・!?

あの、アキが立っていた。

「あ。」

思わず声が出る。

その声に、びくっとしてアキはこちらに顔を向けた。

見るなり嬉しそうに笑って、私を指さした。

「あー、えーっと。直太兄のお嫁さんだっけ?」

想像を裏切らない軽いノリ。

「ご無沙汰しています。その節はどうも・・・。」

「ごめんねぇ。披露宴最後まで出なくって。実はあの時彼女と別れ話が出ててさ、一刻を争う状態だったんだよね。」

悪びれもなくニヤニヤ笑ってる。

「あ、なになに?出版社に送るの?」

そう言いながら私の封書をのぞき込んだ。

『挿話出版』って・・・。」

急に真面目な顔で私の封書の宛先をつぶやく。

「俺も。」

アキの手にしている封書の宛先もこれまた「挿話出版」だった。