びっくりして反射的に「わっ」と声が出てしまう。そこに立っていたのは悠聖だった。

「あ、わり。珍しく騒がしいと思ったら友達来てたんだ」

悠聖の後ろから春斗がひょっこりと顔を出す。

「乃愛じゃん。久しぶり。お前、男いるんじゃなかったの?」

乃愛が返事をする前に、あたしは春斗の顔面めがけて枕をぶん投げた。今一番言っちゃいけない質問なのに。我が兄ながら本当に無神経な男だ。

「部屋狭くね? お前らもリビング来る? 他にも何人かいるけど」

部屋狭くね?は失礼極まりないけれど、その狭い部屋にしょっちゅう来ている悠聖の提案に、いつもならラッキーと浮かれるところだ。

リビングのほうがずっと広いしテレビも大きいし、レコーダーがあるからDVDも観れる。

おまけにあたしの部屋は小さな電気ストーブしかないから寒いのだ。リビングなら暖房があるから暖かい。

だけど今は楽しく遊んだりできる心境じゃない。

断ろうとした時、あたしよりひと足先に乃愛が「いいんですか?」と満面の笑みで言った。

下で待ってるから早く来いよ、と言われて、乃愛はお菓子とペットボトルを持って降りる準備を始めた。

「乃愛、いいの? まだ話したいことあるんじゃないの?」

「いいよ、大丈夫。もう愚痴ってすっきりしたから」

「……なら、いいけど」

すっきりなんてしてないくせに。

だけど乃愛本人がそう言ってるのにあたしがこれ以上追及するのもなんか違う気がするし、そうすることで乃愛が余計に傷つくのは嫌だ。

そう思ったあたしは、乃愛に続いてリビングへおりる準備を始めた。

リビングには春斗と悠聖を含めて計六人もいた。今日は親もお姉ちゃんも家にいないから、友達と騒ぐ絶好のチャンスなのだ。

「今から映画観るんだけど、チィたちも観る?」