その5
夏美


『…やがて訪れるその時代を、私たちは生きていかなければならないんでしょうね。…私はアメリカで、様々な人種の同年代の女性たちと接してきました。だからこそ、ここで断言しますよ。日本の女性が秘めるポテンシャルは世界一です!』


”おおー!!”


”パチパチパチ…”


ここでは大きなどよめきと拍手が同時に沸き起こってね…


私も手を叩きながら、体をジンジンさせていたわ


...



『ただですね、その果てない可能性を秘めた潜在力は、今までずっと眠っていた…。いいえ、違います。眠らされていたんです。これは誤解しちゃあいけないが、誰かにではなく、他ならぬ自分自身によってなんですよ。それって、とても残念なことだと、私にはそう思えてならないんです…』


この時の紅丸さんのしんみりした表情がとても印象的だった…


そして、後から振り返るとここまでが問題提議だったようで、このあと、演説は一気にその解という佳境に入るのよね


...


『…では、どうすればいいか…?まずは皆さん、自分自身を発熱させてください。平たく言えば燃えるんです!』


ここで苦笑が漏れた…


なにしろこの人、話の展開で組込むアクセントが抜群だわ


『…全然、具体的じゃありませんよね、これじゃあ。ということで、私からの提案を申し上げます。それは、今腹を立てていること、不満や嫌いなものを、一旦視界から除いてみたらどうかと…。要は目線の先を、大きいところに持って行くということになります』


『まあ、全部でなくてもいいから、まずは初めの第一歩を踏み出すってことです。いいですか、皆さん…。冒頭話した通り、アメリカでは自分たちがより自由に生きるため、目の前の小さな問題は互いに妥協し合いながら、棚上げにする努力を日々継続してるんです。彼らの一番のそれに該当する問題とは…、さあ、何でしょう?』


ここでようやく、この私にも紅丸さんの誘導先がなんとなく見えかかってきたわよ