その3
夏美


『…今日は皆さん、よく来てくれました!お一人様の方も、この青い空を同伴していただいたようで、透き通るような秋晴れの下、私の大声も映えます。ありがとうござます!』


”アハハハ…”


”いいぞ~、怪物のお姉さーん!”


始まった…


しかし…、実に堂々としてる…


...


『…ええと、私はですね、中学入るまでアメリカ西海岸のロサンジェルスで育ちました。みなさんもご存じの通り、アメリカには世界中の国の人種・人間が米国民として共に暮らしています。様々な言語、様々な宗教、様々な生活習慣、さらに価値観、肌の色…。全部、様々なんです。一様ではありません、すべてが…』


『…ですからお互い、すべて分かり合えるということは到底不可能です。それでも、ひとつの国として経済力、軍事力それに下支えられる外交力とか…、それだけでなく、その他スポーツとか医学とかを含め、世界一を現出できるの源泉は、まさにマンパワーなんです。いろんな人種から成る米国民一人一人のエネルギーが、あらゆる側面で湧き上がっているからこそ、世界ナンバーワンのアメリカが存在できているんですよ』


『…無論、そのアメリカと言えど、そりゃあ多くの問題を抱えていますよ。私自身も幼い頃から肌身に染みていますが、この世界一の大国でも、差別、偏見、格差は敢然と存在します。今現在もね。それでも人々は、最低限の相互理解を必死の思いで自分自身に課し、アメリカ国民の一員であることに誇りと希望を持って日々、生きている…』


『…その為には必要な義務は受け入れるんです。それを厭わない勇気を持ち得て生きてる。徴兵制度などはその最たるものです。自らも国家のために各々みんなが負担を強いてこそ、権利を得られるという、ごく単純な理論ですよ』


紅丸さんは自分が育ったアメリカのことをさりげなく話しているが、おそらくこの後、戻った日本との比較に持て行くんじゃないかな…


...


『…それによって保証された権利のもと、まあ、現実にはいろいろあるでしょうが、頑張った人間にはその対価が天から降ることに、国家は法に触れない限り、制限、関与しないんです。だから、みんな我慢もするが、そのことによって得られる権利に裏付けされた可能性に、自らの力を傾けることにも貪欲になれる。…それこそが、アメリカンドリームを産む土台になっているんです!』


『…翻って、今の日本はどうですか?フツーにフツーの家に生まれてフツーに育って、フツーに大人になる。そんで、フツーに死んでいく…。もちろん、すべての人に当ては当てはまりはしませんよ。全部、一概ではない。でもね…、11歳で母国のこの地に戻った私には、まるでロボットの社会に見えました』


”(聴衆、全員苦笑)”


やはりこういう流れになったわ(私も苦笑)


『…ここで、みんさんに伺いましょう、みなさん、あなたがたはロボットですかー?』


”違いまーす!人間で-す!”


会場は既に紅丸有紀の発するオーラに引き寄せられてか、何とも特有の熱気で包まれていたわ