入れ替わっても気づいてくれる?

「ねね、もえ」

「んー?」

「ちょー久しぶりにさ、入れ替わってみようよ」

「え、いいねそれ」



高校2年生になって数ヶ月たったある日。

妹の桜那から言われた。

妹と言ってもわたしと桜那は双子。

1時間くらい私が早く生まれてきたから一応わたしがお姉ちゃん。

わたしと桜那は親でも親戚でも入れ替わっていることに気づかないほどそっくり。

小学生の時はしょっちゅう入れ替わって遊んでいたっけ。

今は見た目で結構違いが出てるから間違えられることはほとんどなくなったけど、双子コーデしたら今でも間違えられる。



「前に入れ替わったのいつ?」

「えーいつだっけ、中学の時はやってないから……小学生のとき?」

「やば、5年も前?めっちゃ昔じゃん」



小学生の時かぁー。懐かしい、さすがに。



「中学はさ、全くおんなじ制服だから間違えられやすくなったら嫌だからとか言って」

「そうそう!中学からは違いわかりやすいように髪型変えたりとか制服の着崩し方変えたりとかして!」



校則のゆるい学校だったから結構自由にしてたし。

制服もわたしはトレーナー中に着たりとかソックスをルーズソックスにしたりとかして。

桜那はカーディガン着てたし。

メイクとかも割と個性出てたし。わたしはイエベだからオレンジメイクとかブラウンメイクけど桜那はブルベだからピンクメイク。

ピアスこそ中学の時は開けていなかったものの、アクセサリーも華美なものでなければよかったからシンプルめなイヤリングとかもしてた。

桜那とはじゃっかん好みが違うからその辺の違いを活かして見分けつけてもらえるようにしてたんだっけ。



「いつやる?」

「わたしはいつでもいいけどー、いったんさ。この個性封印して双子制服コーデして明日学校行かん?」

「いつも通りでってこと?」

「そそ。入れ替わらないで個性封印。そしたらさらに入れ替わってもバレにくくなるし」

「もえにしては冴えてる〜!」

「ねぇ?わたしにしてはってなに?ねぇ?さく?」

「あははっ」



こんなことを言い合えるのも、桜那だからだと思ってる。

もえとさく。この呼び方もわざと。

モナとサナだと響きも似てて呼びづらい、ってことでふたりの名前の最初の漢字の読み方からもえとさく。

わたし的にはこの呼び方も可愛いから気に入っている。

友達からも間違えないようにと、もえちゃんとさくちゃんって呼ばれることも少なくはない。



「とりあえず、明日は個性封印ってことで」

「はいはい、じゃあわたし寝る!睡眠不足はお肌の敵だから!」

「相変わらずもえは肌の治安命だねぇ」



そう。わたしはいつでもニキビなしのツルツル卵肌を目標にしている。

自称、肌の治安命系女子。

前髪を基本出していないというのもあって、おでこ出しスタイル多めのわたし。

やっぱりツルツルのほうがモチベ上がるし。



「さくは前髪命だけどね」

「だってもえはそもそも前髪ないじゃん」

「あるよ、一応。分けてるだけで、巻いたらちょうどいいぱっつんで作ってはいるよ」

「まぁいいや。わたしも寝よー」

「あそう?じゃおやすみー、さく」

「ん、もえおやすみー」



明日から楽しみになってきたぁ〜!!

わたしはそんな期待を胸に眠りについた。









ピピピッピピピッ

遠くで目覚ましの音が聞こえ、目を開ける。

わたしの朝は朝に弱い桜那を起こすところから始まる。



「さくー入るよー」



こう言っても起きないのはわかっている。

桜那を起こすのは14年の大ベテランのわたし。



「はい、朝。起きる!」

「んー……」



安定の寝起きの悪さ。

想定内。

いつも通りカーテンを開け、布団を剥がす。さらには窓も開け、近所の犬の鳴き声を目覚ましにブレンド。



「ぅあー、寒い……、して犬が安定にうるさい……」

「はい、起きるよー」

「……はーい」



とりあえず第1段階はクリア。

ここまで桜那を起こしたら、わたしは一旦部屋に戻ってストレッチ。

洗顔とスキンケアも終えたらもう一度桜那の部屋へ行く。



「さく!もう起きた?」

「もえの声で目覚めております、ご安心を」



ストレッチをしている桜那を見て、今日も起こすの成功、と勝手にミッション達成。

わたし達双子はいつもこんな感じの朝からスタートする。



「さくのストレッチ終わったら下行こ」

「はいはーい」



毎日のルーティーン、それは。

一緒にリビングに行ってままにクイズを出すこと。

双子当てクイズ。難易度の高いクイズ。

だけど毎回間違えるから、わかってて間違えているのではないかと思っている。

まぁそんなことはどうでもいいんだけど。

高比良家は朝からわちゃわちゃしてからじゃないと始まらない。



「おーわりっ!よし。下行こ!」

「急に元気だなぁ」



桜那はストレッチをするとエンジンがかかるからここからはハイテンション。

ふたりで仲良くリビングに行ってままとぱぱと顔を合わせる。



「あら、おはよう。萌那、桜那」

「「おはよ、まま」」

「もえ、さく、おはよう」

「「ぱぱおはよー」」



そして、いつものひとこと。



「「どっちがもえでどっちがさくでしょうか!」」

「え〜?右がもえちゃん、左がさくちゃんじゃない?」

「「はずれー」」

「右はさく」

「左はもえでした!」



ほらね。また間違えた。

ここまで来たら本当にわざと間違えてるみたいだよ。



「はいはい、とりあえず学校行かなきゃでしょ!ほら支度しなさい!」

「「はーい」」



茶番も終わり、いつも通りの朝。

ままのおいしい朝ごはん。

今日はフレンチトーストだった。

朝からカロリーエグいけど、おいしいからプラマイゼロだと思う。

とりあえずはおいしければ全て良しってことで。

おいしい朝ごはんを食べ終えたところで自分たちの部屋へ。



「個性封印ね……難しい」

「とりあえずポニテ?体育あるし」

「あーあり。もえ前髪出してね、後れ毛と触覚も巻いて」

「はいはい。制服は?どうする?」



相談しながら少しずつ支度を進めていく。

髪型はポニーテール。後れ毛はゆるく巻いて、触覚はS字巻き。

やばい、超楽しくなってきた。



「制服はさ、とりあえずベストだけ色変えない?それ以外は校則通りに着る感じで」

「あとで着崩そ、もえ頼んだ」

「まかせろっ!」



制服は余計なものは着ないことにし、シンプルにベストの色だけイロチ。それ以外は基本校則通り、全く一緒。

ベストの色はわたしが明るめのベージュ、さくが淡いピンク。

あーなんかちゃんと双子コーデするの久々すぎて新鮮。



「やばい、エモい」

「同じこと思ってた」



さくも同じ気持ちらしくテンションが上っているのがわかる。

こんなにテンション上がってるさく見るの久しぶりかも。