その日の夜。

 あ~疲れたぁ。

 英語の予習の途中でシャーペンをかしゃんとノートの上に置くと、両手を天に突きあげぐいっと伸びをする。

 そういえば……。

 今日の風船割りゲームのときのことを思い出して、ちらっと由井くんの方を見る。

 由井くん、付き合ったことあるって言ってたよね。
 どんなふうにカノジョとすごしていたんだろう?
 ……話、聞いてみたいな。

 創作のための興味と……それを聞けば、どうやって由井くんに接したらいいか、ちょっとは参考になるかもしれないじゃない?
 だって、男の子とこんなふうにずっと一緒にいるなんて、はじめてのことなんだもん!
 だけど、さすがに面と向かって「教えて!」なんて言う度胸ないし……。

 そんなことをぐるぐる考えながら悶々としていたら、
「言いたいことがあるなら、さっさと言えば?」
 と、由井くんがこっちも見ずにシャーペンを走らせ続けながら言った。

 うわぁ、チラ見してたのバレてた!?

 オタオタしながらも、わたしは思いきって切り出した。
「えっと……前のカノジョさんとは、どんなだったのかなーって、思ったりなんかしてまして」
 わたしの言葉にぴたりと手を止めると、由井くんはシャーペンを置いてわたしの方をまじまじと見た。
「ひょっとして、ヤキモチ的な? それならスッパリ後腐れなく別れたし、なんも心配――」
「ちがいます!」
 最後まで聞かずに、ビシッと否定する。
「は? じゃあ、なにが聞きたいんだよ」
 そんなわたしに、由井くんが眉をひそめた。