碧天(へきてん)が広がる暖かな太陽の下、黄土色に輝く地面の上に、一人(たたず)む美少女がいた。

 陽にすかすと濃紫色(のうししょく)が浮き出る柔らかな長い黒髪は、腰下まで届いている。

雪のように白い肌を持ち、長いまつげに(ふち)どられた眼は大きな宝石のようだ。

瞳は深い瑠璃色(るりいろ)で、まるで紅玉(こうぎょく)が輝いているような濡れた唇。

歳は十八で花盛りの瑞々(みずみず)しい輝きを放っている。

 簡素な藍色の漢服を(まと)い、遠い空を物憂(ものう)げに見上げる様は、ため息が出るほど(うるわ)しい。

 解語之(かいご)の花と形容されるほど美しい雪蓉は、強風が吹けばたちまち倒れてしまいそうな、可憐な物言う花に見えた。

 そんな彼女は、集中するように深く息を吸い込むと、おもむろに大きな(くわ)を頭上に持ち上げた。

「でぇいっ!」

 華奢(きゃしゃ)な体のどこからそんな野太い声が出たのかと呆気に取られるような、およそ乙女には相応しくない勇ましい掛け声と共に、鉄製の鍬を振り下ろし土に突き刺した。

 そこからはもう、我が目を疑うかのような光景が目の前で繰り広げられる。

雪蓉は、すさまじい速さで鍬を振り下ろしては土を耕し、あっという間に耕耘(こううん)された畑が出来上がった。

 遠くから雪蓉の様子を見守っていた小さな女巫(みこ)仲間たちが、ボソボソと囁き合う。