もちろん、突き詰めて行けば、もっとたくさん彼女を知りたいし、触れたいとも思う。愛し合えればこれ以上ない程に幸せだと思うし、求められれば他に望みなど何もなくなるだろう。
けれど、何よりも願うのは、カミーユの幸せ、ただそれだけなのだ。幸福そうに微笑む彼女を隣で見守ることが出来たら、アルベール自身も幸福だと感じるだろう。今まさに、楽しそうな彼女を見て、自らも楽しいと感じるように。
そんなことを、改めて思った。
舞台の内容はやはり分からず仕舞いだったけれど、結局アルベールは一睡もすることなく、カミーユの隣という特等席に座って、心地良い時間を過ごしたのだった。
オペラの舞台が閉幕した後、興奮冷めやらぬ様子のカミーユをシークレットルームに残して一度階下へと降りたアルベールは、一度オペラハウスの外に出てカミーユが好みそうな軽食と飲み物を手配した後、再びオペラハウスの中へと戻った。
従業員に声をかけ、支配人を呼ぶように頼めば、先程シークレットルームへと案内してくれた支配人は慌てた様子で駆けつけてくれる。部下たちの話をし、快く受け入れてもらった後、早々にシークレットルームへと引き返した。
少しでも早く、カミーユの元へと戻りたかったから。
誰も入れないようにと伝えはしたが、相手が高位貴族ならば拒み切れない可能性がある。俺の名前を出してなお振り切って入る者ならば、処罰するにしても躊躇する必要はないだろうが……。
王族が秘密裏に訪れることもある一室であるため、普通に考えれば従業員の静止を振り切って押し入るなんてこと、どんな貴族でも思いも寄らないだろう。万が一にもないとは思うが、と考えつつ、階段を足早に進んで行って。
階段を登り終えたアルベールは、すぐにその事態に気付いた。
先ほど自分が出て来たシークレットルームの扉の前。二人の男と共にいるのは、見覚えのある一人の女性。勘違いでなければ、彼女は先ほどシークレットルームの隣室で控えていてくれた付き添いの従業員である。
そんな彼女と、二人の青年が言い争うように言葉を交わすのが目に入り、アルベールはほっと息を吐いた。どうやら彼女が、シークレットルームへと入ろうとした者を止めてくれたようだ、と。
だがあの声量ならば、彼女の耳にも入っているかもしれぬな。
不安がっているであろう彼女を早く安心させてあげなければ。そのためにも、早いところあの扉の前の者たちを追い払い、部屋へ入ろうと、そう思っていたのだけれど。
だんだんと、何かがおかしいと気付き始めたのは、廊下の半分ほどに差し掛かった時。青年二人と従業員の会話に耳を傾けたその時だった。
けれど、何よりも願うのは、カミーユの幸せ、ただそれだけなのだ。幸福そうに微笑む彼女を隣で見守ることが出来たら、アルベール自身も幸福だと感じるだろう。今まさに、楽しそうな彼女を見て、自らも楽しいと感じるように。
そんなことを、改めて思った。
舞台の内容はやはり分からず仕舞いだったけれど、結局アルベールは一睡もすることなく、カミーユの隣という特等席に座って、心地良い時間を過ごしたのだった。
オペラの舞台が閉幕した後、興奮冷めやらぬ様子のカミーユをシークレットルームに残して一度階下へと降りたアルベールは、一度オペラハウスの外に出てカミーユが好みそうな軽食と飲み物を手配した後、再びオペラハウスの中へと戻った。
従業員に声をかけ、支配人を呼ぶように頼めば、先程シークレットルームへと案内してくれた支配人は慌てた様子で駆けつけてくれる。部下たちの話をし、快く受け入れてもらった後、早々にシークレットルームへと引き返した。
少しでも早く、カミーユの元へと戻りたかったから。
誰も入れないようにと伝えはしたが、相手が高位貴族ならば拒み切れない可能性がある。俺の名前を出してなお振り切って入る者ならば、処罰するにしても躊躇する必要はないだろうが……。
王族が秘密裏に訪れることもある一室であるため、普通に考えれば従業員の静止を振り切って押し入るなんてこと、どんな貴族でも思いも寄らないだろう。万が一にもないとは思うが、と考えつつ、階段を足早に進んで行って。
階段を登り終えたアルベールは、すぐにその事態に気付いた。
先ほど自分が出て来たシークレットルームの扉の前。二人の男と共にいるのは、見覚えのある一人の女性。勘違いでなければ、彼女は先ほどシークレットルームの隣室で控えていてくれた付き添いの従業員である。
そんな彼女と、二人の青年が言い争うように言葉を交わすのが目に入り、アルベールはほっと息を吐いた。どうやら彼女が、シークレットルームへと入ろうとした者を止めてくれたようだ、と。
だがあの声量ならば、彼女の耳にも入っているかもしれぬな。
不安がっているであろう彼女を早く安心させてあげなければ。そのためにも、早いところあの扉の前の者たちを追い払い、部屋へ入ろうと、そう思っていたのだけれど。
だんだんと、何かがおかしいと気付き始めたのは、廊下の半分ほどに差し掛かった時。青年二人と従業員の会話に耳を傾けたその時だった。