騎士たちの相手をした方が、話も合うだろう。それに、英雄と名高いアルベール・ブランと言葉を交わせると知れば、エルヴィユ騎士団の者たちも嬉しいだろうから。
そんなカミーユの言葉を拾ったようで、アルベールはちらりとこちらを見た後、ふっと優しい笑みを浮かべた。「そう思うか?」と言いながら。
「英雄にしても、公爵家の嫡男にしても、ただ言葉を交わすとすれば、彼らにしては扱いづらい相手だろう。交わすものが剣であれば、お互い、それなりに楽しめそうだが、残念ながらこの服でそれは出来そうにない。……それに、俺としてはこうして君の傍にいる方が遥かに楽しい」
「剣の手合わせならば誰とでも出来るが、君は一人しかいないからな」と、彼は続けていて。こちらを見つめるその楽しそうな表情に、カミーユはただ「そう、ですか」という、曖昧な返事をすることしか出来なかった。
庭先に準備されていたテーブルにアルベールを案内し、自分もまたその向かい側の席につく。テーブルの上には、良い香りの漂うダージリンの紅茶に、お茶請けとして用意されたいくつかの柔らかそうな焼き菓子。
美味しそう、と思いながら焼き菓子を眺めるけれど、さすがにアルベールが目の前にいるこの状態で好きに手を伸ばすわけにもいかず。カミーユは内心で軽く溜息をついた後、姿勢を正してアルベールへと向き直って。
思わず固まってしまった。真っ直ぐにこちらを見る、深い藍色の目に驚いたから。
長い銀色の睫毛を僅かに伏せ、嬉しそう、というよりも幸せそうな表情で、彼はカミーユの方を見ていた。少しも視線を逸らすことなく、ただ、じっと。
その雰囲気の柔らかさに、普段ならば男の人の視線から感じる恐怖もなく、むしろ戸惑いだけが胸の内に湧き上がる。
一体、なぜ彼は、これほどまでに幸福そうに自分を見るのだろうか。
居た堪れなくなって、失礼にならない程度に顔を逸らし、再びちらりと目だけでアルベールの方を覗う。案の定というべきか、その藍色の目がカミーユから外れることは、一度としてなくて。
数分の逡巡の末、「あの……」と、堪らず声をかけた。
そんなカミーユの言葉を拾ったようで、アルベールはちらりとこちらを見た後、ふっと優しい笑みを浮かべた。「そう思うか?」と言いながら。
「英雄にしても、公爵家の嫡男にしても、ただ言葉を交わすとすれば、彼らにしては扱いづらい相手だろう。交わすものが剣であれば、お互い、それなりに楽しめそうだが、残念ながらこの服でそれは出来そうにない。……それに、俺としてはこうして君の傍にいる方が遥かに楽しい」
「剣の手合わせならば誰とでも出来るが、君は一人しかいないからな」と、彼は続けていて。こちらを見つめるその楽しそうな表情に、カミーユはただ「そう、ですか」という、曖昧な返事をすることしか出来なかった。
庭先に準備されていたテーブルにアルベールを案内し、自分もまたその向かい側の席につく。テーブルの上には、良い香りの漂うダージリンの紅茶に、お茶請けとして用意されたいくつかの柔らかそうな焼き菓子。
美味しそう、と思いながら焼き菓子を眺めるけれど、さすがにアルベールが目の前にいるこの状態で好きに手を伸ばすわけにもいかず。カミーユは内心で軽く溜息をついた後、姿勢を正してアルベールへと向き直って。
思わず固まってしまった。真っ直ぐにこちらを見る、深い藍色の目に驚いたから。
長い銀色の睫毛を僅かに伏せ、嬉しそう、というよりも幸せそうな表情で、彼はカミーユの方を見ていた。少しも視線を逸らすことなく、ただ、じっと。
その雰囲気の柔らかさに、普段ならば男の人の視線から感じる恐怖もなく、むしろ戸惑いだけが胸の内に湧き上がる。
一体、なぜ彼は、これほどまでに幸福そうに自分を見るのだろうか。
居た堪れなくなって、失礼にならない程度に顔を逸らし、再びちらりと目だけでアルベールの方を覗う。案の定というべきか、その藍色の目がカミーユから外れることは、一度としてなくて。
数分の逡巡の末、「あの……」と、堪らず声をかけた。