私は車に揺られながら竜海さんに気づかれないように小さく息を吐いた。

家についてしまえば
私達はまた赤の他人だ。

今は夫婦でもなければ、彼氏彼女でもない。
まして友達というのもまた違うし。
だから今日が終われば
また連絡すらとることもなくなるだろう..

憂鬱な気持ちで窓の流れる景色を見つめる。

刻一刻と迫る別れの時間に
寂しさが波のように押し寄せてくる。

このまま家になんか着かなければいいのに..

私がハアっとため息をもらしたと同時に
竜海さんも溜め息をもらした。

それに気付いてパッと竜海さんに
視線を向けた。
すると、カチッと竜海さんと目が合って
気恥ずかしくなって
再び視線を前に戻した。

私は照れくささを隠すように
「た、竜海さん！！あそこのハンバーガーショップに寄ってくれませんか？」
声を少し張り上げて先に見えるハンバーガーショップを指さした。

竜海さんは「えっ？」と運転しながら
私が指を差している方へと視線を向けた。

「新しい職場を紹介してもらったお礼に
ご馳走させてください！！」

竜海さんは私にお金を出させることに少し戸惑っているようだったが
「ご馳走したいんです！！」
と、もう一度宣言する私にフッと目を細めた。

「それじゃあ、ご馳走になろうかな？」

私は「はいっ」と嬉し気に笑んだ。