「それでは今日はありがとうございました。すみません、僕、生き物の話しになると止まらなくて長い時間付き合わせてしまって。」

禅ちゃんは私達との別れ際、頭を下げた。

「いや、こちらこそありがとう。
禅くんのお陰で生き物の雑学が増えたよ。今度接待のときにでもつかわせてもらおうかな」

竜海さんが笑い掛けると禅ちゃんはホッとしたように顔を緩めた。

「それじゃあ僕はここで。桜良ちゃんまたお店に飲みに来てね。」

禅ちゃんは私に小さく手を振った。
　
「うん。ありがとう。気をつけて帰ってね。」

私が笑顔を向けると禅ちゃんは少し寂しそうな表情を浮かべた。

「禅ちゃん..？どうかした？」

私は心配になって禅ちゃんの顔を覗き込んだ。

「いや、とても楽しかったから別れるのが少し寂しくなっただけだよ。それじゃあ、またね。」
禅ちゃんは笑顔で私に投げ掛けると、
「失礼します。」と竜海さんに会釈してから
自分の車に向かって走り去っていった。