竜海さんは自分の胸に顔を埋めたままの私を
見てフッと微笑むと
「桜良が落ち着くまで構わない」
と頭を撫でながら優しい声色で言った。

私ってずるいよね..

でも、もう少しだけこの温かい腕の中に
包まれていたい... 

竜海さんの洋服からは香水の香りは一切しなくて代わりに優しい柔軟剤の香りがほのかに漂ってくるだけだ。

柔軟剤も私の好きな香りのものを
使ってくれてるのだと気付いて
私はそれだけでも嬉しくて胸が熱くなった。

このままいっそ石化しちゃいたいくらいだ..

だけど、現実にはそんなこと起こるはずもなくてそろそろ離れなければ変に思われるし。

明日からまた竜海さんのいない生活が
待っているのだ。
あまり引っ付いてると余計寂しくなる。

私は名残惜しさを振り切って
そっと竜海さんから体を離した。


「ありがとうございますっ
もう大丈夫です!!」

私は竜海さんに目一杯の笑顔を向けた。