Side桜良

桜良は禅ちゃんとレストランを出ると
会社までの並木道を二人並んで歩いていた。
道端には枯れ葉が落ちていてそこを歩くたびにシャクシャクと乾いた音をたてる。

「あの人が桜良ちゃんの結婚相手だったんだね。びっくりしたよ。」

禅ちゃんは隣で歩く私に目を向けて言った。

「驚かせてごめんね。」

禅ちゃんは「ううん」とかぶりをふった。

「でも、何で別れたの？
あっ、言いたくなければ
言わなくても大丈夫だけど」

私は少し考えて口を開いた。

「実は私が整形してることがばれたの。」

「えっ？整形って顔の？」

私はコクリと頷いて話を続けた。

「それが竜海さんに知られてしまって、、そこから色々あって..」

そこまで言って声が震えだして
口をつぐんだ。

「そっか、辛いこと思い出させてしまって
ごめん」

私はフルフルと頭を振ると
「もう大丈夫だから」と
無理に笑顔を作る。

私の無理矢理作った笑顔を見た
禅ちゃんは一瞬顔を歪めたが
優しい笑みを浮かべて口を開いた。

「僕は昔のぽっちゃりした時の桜良ちゃんも
今の桜良ちゃんもどちらも好きだよ」

私は禅ちゃんの好きを友人としての
好きだと受け取って
「ありがとう。
私も禅ちゃんのことは大好きだよ」
と柔らかな笑顔を禅ちゃんに向けた。

禅ちゃんはその大好きに深い意味はないと悟っているはずなのになぜだか顔を赤くした。