黒木は「ん〜〜」と少し考えてから 
「分からん!!」ときっぱり答えた。

「なんだよそれ?役に立たねえ男だな」
 
俺が呆れたように椅子に深く寄りかかると、黒木はムッと顔をしかめた。

「女心は難しいんだよ!
ことわざにも“女心と秋の空”ってあるだろ?うちの奥さんだってこの間まではアイドルにキャーキャーうつつ抜かしてたと思ったら、今は別のイケメン俳優に心変わりだぜ?」

それを聞いてさらに不安に襲われる。

「じゃあ、どうすればいいんだよ?」

真っ青に青褪めた俺を見て黒木は
身を乗り出して口を開いた。

「それはもう一度、桜良ちゃんに好きになってもらうしかない。
お前は桜良ちゃんと出会ったばかりのゼロからのスタートだと思え。いや、嫌われてるとしたらマイナスからのスタートだ。そこから、もう一度自分に恋をしてもらうしかない」

黒木は断言した。

「マイナスからのスタートかぁ..」

黒木の言葉に弱々しく呟く。

「モタモタしてるとあの禅ってやつに桜良さん、取られるぞ?
それでもいいのか?」

黒木は発破をかけるように
問い掛けてきた。

「よくねえよ!!」

間髪入れずに答えた俺に
黒木はフッと笑みを零した。

「まあ、頑張ってくれたまえ。
相談料としてパフェ追加で頼むね」

そしてメニュー表を再び開くと
「すみませ〜ん」と
ウキウキした様子で
店員さんを呼びつけている。

俺は呆れたように息を吐くと
外の景色を眺めながら、
心の中で桜良の面影を探していた。