だけど桜良はそのパンツの一件から
明らかに俺を避けるようになった。

俺は桜良と話したいのに俺が視界に入るや否や全力で逃げられる。

だけど、どうにか桜良ともう一度話してみたい俺は考えた。

そして桜良と話す口実を思いついたのだ。

桜良が一人残業しているのを
見かければ取引先からの頂き物だと言って
ケーキやお菓子を差し入れた。

だけど、本当は急いでケーキ屋に
車を走らせていたのだ。

桜良は自分からベラベラと喋るタイプでは
ないけど俺の話をうんうんと
柔らな表情で耳を傾けてくれる。

それが嬉しくてつい長話になってしまうのだ。
  
一度、桜良の口元にクリームが
着いてるのを見つけて手で取ったときは
驚いた桜良に思いきり突き飛ばされたっけな。

その後、桜良は真っ赤な顔で
何度も何度も「ごめんなさい」
と頭を下げていた。

桜良はいちいち反応が
新鮮で可愛いかった。

俺は思い出して
思わずフッと笑みをこぼした。


でも、もう桜良は住んでいた家にも
この会社にもいない...


そう考えた瞬間、
俺の顔から一瞬で笑顔は消えた。


別れても同じ会社なら
いつでも会えると安心していたのかも
しれない。

離婚後、直属の上司に辞表を
提出したと耳にしたときは
かなり焦ったのを覚えている。

なんとか少しでも繋がりを残しておきたくて
友人の会社を半ば強引に紹介したのだ。

俺はどうしたら良いのだろうか。

中途半端に桜良を繋ぎ止めている。

それが桜良を苦しめると分かっていながら...