「桜良を紹介した会社の社長は
私の大学時代の友人ですし、
何かあれば連絡するように伝えているので
大丈夫ですよ」

俺は早くここから出たくて親父が安心するような言葉を並べる。

「そうか...」

親父は一言呟くと、
少し言いにくそうに再び口を開いた。

「なあ、竜海...」


「まだ何かあるんですか?」

俺は面倒くさげに口を開く。

「桜良ちゃんとは寄りを
戻すつもりはないのか?」


「…………」


「結婚すれば意見の食い違いで
喧嘩することなんてザラだ。
私だって母さんと何度喧嘩したことか」



「・・・・・」


「何があったか知らないが
少し冷静になって話し合ったらどうだ?」


「話はそれだけですか?
仕事があるんで失礼します。」


俺は「竜海!!」と呼び止める親父を
無視して社長室を後にした。