「お前のことはどうでもいいんだが
桜良ちゃん、今日から新しい職場だろう?
ちゃんと上手くいってるか連絡してみたか?」

自分の息子相手にどうでもいいとは酷い言い草だな...

親父は謙虚で優しい桜良のことが
大のお気に入りだった。

離婚すると言ったときも家族総出で
大反対だった。

理由を話さない俺に親父も母も
きっと俺が何か酷いことを
言ったのだろうと決めつけている。

まあ、酷いことを言ったのだけど。

俺は昔から親に甘えることも頼ることもなく
何をするにも自分で淡々と決めて進めてきた。
それが親にとっては物足りなかったのだろう。
なんでも一人で決めてこなす俺とは違って
少し抜けているところがあって
なんでも素直に聞き入れる桜良は
親にとっては可愛くて構いたくなるのだろう。

「離婚したのにそんな頻繁に
連絡は取らないですよ」

取らないというよりは取れないといったほうがよいのだけど。
何度となく、電話を掛けようとしたのだが
桜良に煙たがられるのではないかと、色々考えているうちに緊張から携帯画面とにらめっこが終わらないのだ。

「なんて冷たいやつだ。
それだから桜良ちゃんに愛想をつかされてしまうんだ。」

俺は煩わしげにハアッと大きく息を吐く。