side桜良

私が電話を切ると、隣に座る翠が
「竜海さんなんだって?」と
興味津々といったように目を輝かせながら聞いてきた。

「うん。友達と飲んでるらしくて
今からその友達とこっちに来るって」

「えっ!!ほんとっ!
友達ってどんな人?」

「さあ。
でも、学生時代の友人ていってたから
多分結婚式のときに会ったことはある人なんだろうけど
名前聞いてなかったから..」

「もうっ、桜良は肝心なこと聞いてないんだから。
でも、竜海さんの友達ってことは
やっぱりイケメンかなッ」

翠は目を輝かせながらバックから化粧ポーチを取り出すと
「ちょっと化粧直してくるッ」
そう言ってそそくさとお手洗いへと向かっていった。

「あんたは彼氏がいるでしょうがッ」

そう私が突っ込みを入れたときには
すでに翠の姿はなく、私は一人呆れたように笑った。

ストーカーの件は翠にはまだ言っていない。
もしストーカーにつけられているなんて言ったら
きっと心配して捕まえると躍起になるに違いない。
相手がどんな人物なのかもわからないのに
翠をそんな危険な目にあわすわけにはいかない。