「今朝の最高気温10度か...」

俺は新聞に乗っている
週間天気の気温を見て
思わず声を漏らした。

そろそろ、スーツも冬用に
衣替えしないといけないな...

そう考えながら
桜良のことを思い出す。

桜良は喘息持ちで冬から秋にかけて
気温の寒暖差で喘息が酷くなるときがある。

急に寒くなってきたから風邪とか
引いてないだろうか...

桜良は体が弱いからもし風邪が悪化して
肺炎にでもなれば心配だし。

今日は俺が紹介した会社の入社日だ。

予め、黒木から会社の様子は聞いてるから
悪い人もいないし大丈夫だとは思うが。

桜良は初対面の人に対して
かなり警戒心が強い。

上手くやっているか
気になるけど流石に友人の会社といえど
安易に見に行くことは出来ない。

取り敢えず、黒木に桜良の喘息のことと
何かあればいつでも連絡するように
伝えてはいるから心配はないだろうけど。

そうは思いつつも
車で会社に向かう途中
桜良の働く会社の前を
わざわざ遠回りして通ってしまう。

もしかしたら、
出勤途中の桜良に会えるのではと
どこかで期待をしながら..

ここまできたら
自分がストーカーにでもなったように
思えてくる。

それでも、桜良に会えないかと
一歩外に出れば
俺は毎日のように、
桜良の面影を探していた。