しかもそんな時に限って仕事でトラブルが
発生したり、出張が重なって桜良と顔を合わせる機会も減ってしまった。

そして、ようやく仕事が片付いて桜良と仲直りしようとケーキを手に家へと帰った矢先、桜良から離婚を切り出されたのだ。


桜良の去ったこの部屋は
シーンと静まり返って
寂しさと後悔だけが残った。

俺は枕元のスマートフォンを手に取った。
 
桜良からのメールや着信はない。

小さく息を吐くとベッドから起き上がり
キッチンへと向かった。

ニヶ月前までは俺より1時間もさきに
起きた桜良が料理支度をしながら
“おはようございます”と笑顔で出迎えてくれた。

しかし、今は乱雑に散らかったキッチンで
一人分のコーヒーを入れる。

それを飲みながら今朝届いた新聞を開いた。

一人でコーヒーを飲んでると
桜良の少し薄味の味噌汁が恋しくなる。

いつも、俺の健康を気遣って
料理は薄味だった。

最初は薄く感じたけど
結婚して1年も経つとその
味にも慣れてくるもので
今では外食すると濃いなと感じて
しまうほどだ。