「ありがとうございます、ブラントさま。たくさん泣いて、スッキリしました」

「それは良かった。顔色も大分良くなった気がします」

「そう……でしょうか?」


 頬を撫でるブラントの手のひらにドギマギシつつ、ラルカはそっと首を傾げる。


「ええ。ここに来るまでの貴女は、今にも倒れてしまいそうな様子でしたから。……ずっと我慢をしていらっしゃったのでしょう?」

「そんな風に見えていたのですか?」


 密かにショックを受けつつ、ラルカは目を伏せる。


「そうですね……。わたくし、本当は誰かに打ち明けたかったのだと思います。自分の置かれた状況を、今の気持ちを。
だけど、どこを見ても、誰と会っても、まるで姉さまに見られているような気がしてしまって……」


 冷静になって考えれば、エルミラや同僚たちは、ラルカのことを心配してくれていた。彼女の味方になってくれたのだろうと分かる。

 けれど、恐怖に支配された状況では、判断力が失われる。己を取り巻くすべてのものが敵のように思えてしまう。
 ラルカは自分が怖くて怖くてたまらなかったのだと――――追い詰められていたのだと気づいた。