数日後、咲とあの日の話題には触れていない。 何かの間違いだと言い聞かして過ごす日々だった。長い授業が終わり、トイレへ続く廊下を歩いている時だった。 移動教室なのか、荻原先輩とすれ違った。 何となく気まづくて、何も言わずに通り切ろうと思った時。そこで荻原先輩に肩を叩かれた。 「ハンカチ落としてない?」 荻原先輩はハンカチを私に差し出してくれていて、不思議そうな顔で私を見た。差し出されていたのは私のハンカチだった。