「次からは気を付けるように」
「はい。すいません」
足早に自分の席に座り、移動教室の準備を始める。他のクラスメイトはもう廊下に並んでいて、私を待っているようだった。
はぁ、とお腹の底から出したような深い溜息をついてから、席を立った。
廊下に出て列に並ぶと、後ろから肩を叩かれた。
「琴音、大丈夫だった?」
声で分かる。優しさが滲む出るような声、智輝だ。
「大丈夫だよ!完全に私が悪かったもん。」
笑顔で口にしながら、咲の好きな人は智輝だったと思い出した。
「そっか。でもあんな強く怒る事じゃなかったよなあ?」
智輝は優しい。それは誰にでもだ。