暴走族の総長だからという理由で皆、遠巻きに彼のことを見ているが、話してみると周りの男子とさほど変わらない。
ちょっと愛想が悪いだけで。
「バイト探してんだろ。俺がお前に金払うって言ってんだよ」
言葉の意味は理解した。
『でも、なんで?』と今度は別の疑問が湧く。
暴走族の総長が雇うバイトって……。
何か変なものでも運ばされるの?
「お断りします」
「いいのか?お前にとっては好条件だと思うけど」
好条件。その言葉にピクリと反応してしまう私。
「い、一応、内容だけ聞いとく」
「時給1,200円。仕事内容は俺の側にいること」
「……はい?」
訳のわからない内容に思わず首を傾げる。
蓮見怜央の側にいるだけで1,200円?
それだけでお金が貰えるほど、世の中は甘くないことを私は理解している。(……つもりだ)
これは絶対、何か裏がある。
「彼女でも探してるの?」
「そんなのにわざわざ金払うかよ」
そんなの、ね。
校内で彼に近づく女子はいない。
けれど、蓮見怜央という人物がモテるということは、その端正な顔立ちを見れば容易く想像がつく。