「話あんだけど」
「えっ……?」
彼は『私はないです』と言ってあっさり引き下がる相手なのだろうか。
私が言葉に困っていると「ここじゃあれだから」と、冷たい瞳は廊下へと視線を移す。
たまたま廊下に立っていた男子は彼と目があったのか、ビクッと体を震わせた。
「行くぞ」
どうやら、私に拒否権はないらしい。
私の返事を聞く前に歩き出した彼の背中を追うために、急いで椅子から立ち上がる。
「る、瑠佳ちゃん行くの?わ、わ、わ私も行こうか?」
「大丈夫。ここ学校だし、すぐ戻ってくから。新那はパン食べながら待ってて」
私はそう言い残して、蓮見怜央の背中を追った。
そして、着いた先は屋上。
ここに来るまでの間、彼はずっと無言で、廊下にいた生徒達の方がお喋りだった。
『蓮見怜央の後ろ歩いてるの、3組の子だよね?』
『あの子何かしたの?』
『彼女……って感じでもないか』
どれも私と蓮見怜央の関係を不思議に思うものばかりで、チクチクと刺さる視線はあまり良いものではなかった。