「せ、狭いでしょ?私はリビングで寝ようかな?」

同じベッドで寝るなんて絶対無理。

今でもバクバクいってる心臓がもつわけない。

「別に平気だろ」

怜央はなかなかベッドに近づこうとしない私の手を引っ張ると、無理やりベッドに迎え入れた。

気づいたら私の目の前には怜央のくっきりと浮き上がる鎖骨があって、手は腰へと回されている。

これは同じベッドで寝るというよりも、抱き合いながら寝るという方が正しいだろう。

「あの、怜央」

「ん?」

「この体勢で寝る必要ってある?」

誰かに見られているならまだしも、ここは怜央の家。

姫を演じる必要はない。


「今も時給は発生してんだ。瑠佳に拒否権はねぇ」

そう言うと瞼を閉じる怜央。

どうやら、本気でこの体勢のまま眠りにつくようだ。

はじめこそ緊張で眠れなかったものの、トクン、トクン、と優しいリズムを刻む怜央の心音に私もゆっくりと瞼をおろした。





ピチョン、ピチョン、

水の音……?また蛇口を締め忘れた?

それともこれは、あの廃虚ビルの中───?

夢の中の世界へと誘われてから数時間。

私の目を覚ましたのは、またしても遠くから聞こえた水の音だった。

ベッドから飛び起きた私の心臓はドクドクと激しい音を立て暴れている。