「怜央、助けに来てくれてありがとう」

「だから、俺は礼を言われる筋合いはねぇんだよ」

そんなことない、怜央はちゃんと約束を守ってくれた。

だって私、傷なんてひとつもつけられてないよ。

伝えたいことはたくさんあったのに、涙を止めることに必死だった私は、お礼を言うことしかできなかった。



その後、怜央の話によると私が連れ去られた場所はどうやら廃虚ビルだったようで、ライトくんからの情報が入り、私の居場所を特定したらしい。


香坂を真宙くんたちに任せた怜央は冬馬くんが手配したタクシーに私と乗り込む。

私の手はずっと握られたままで、それはタクシー内でも続いた。

バイクじゃなくてタクシーだったのは私の手を離さないため?

……なんて、うぬぼれかな。

「そういや、これ冬馬から預かった」

「あっ、鞄!ありがとう」

狂猫のメンバーに捕まったとき、その場に置いてきてしまったのだろう。


怜央からもらった狼が無事だったことに安堵した直後、これを作ったのは櫻子さんだという事実にまた胸が痛む。

私はもうこの気持ちなが何なのか、さっき怜央の顔を見た瞬間気づいてしまった──。