「……怜央ってば案外、心配性?」
「そーかもな。昔から3歩歩けば転んでピーピー泣くような奴が近くにいたから」
ふっ、と懐かしむように笑う怜央。
その脳裏には櫻子さんのことを思い浮かべているのだろう。
幼なじみって言ってたし。
なんだか胸がチクリと痛んで、話題を逸らす。
「さっきの人達がいい感じに噂を流してくれたらいいのにね」
「……ポジティブな奴だな。あ、そういやあれ」
何かを思い出したように、ポケットを漁る怜央。
「やる」
歩きながら渡されたのは狼の形をしたキーホルダーだった。
可愛いけれど無表情なその狼は、どことなく怜央に似ている。
「何これ?」
「防犯ブザー。しっぽを引っ張ると音が鳴るようにできてある」
そう言われてお尻を見ると、しっぽがストラップ状になっている。