「もう19時か。弟待ってんだろ?送ってく」

ファミレスを出たあと、スマホを手にした怜央がそう口にした。

「ありがとう」

志貴には寄り道して帰ると伝えているが、あまり遅くなるわけにはいかない。

時間を見終わった怜央がスマホをしまおうとした時、隣でヴーヴーッと音が鳴った。

「……悪い。電話」

「わかった。じゃあ、私あそこのベンチに座ってるね」

「ああ」

姫といえど電話の内容を聞くわけにはいかない。

そう思って数メートル先にあったベンチに腰掛けながら、怜央を待つことにした。

ここからなら声は聞こえないけど、姿は見える。

私も今のうちに《今から帰る》って志貴に連絡しておこうかな。

教科書やノートが入った鞄の中からスマホを探していると、体格のよい男2人組が私の両隣に腰を下ろした。

空席のベンチが並ぶ中、わざわざ隣に座ってきたことに違和感を感じ席を立つ。

すると、右側に座った男はそれを静止するかのように私の手をガッチリと掴む。

その瞬間、身の毛がよだつほどの恐怖を感じた。