「松倉くん、いるかな」

授業が全て終わり、部活動で賑わう放課後。

私はある人物を探して校内を歩き回り、最終的にその人物が所属する部活の活動場所である弓道場に前に辿り着いた。


橋本 七香(はしもと ななか)。高校2年生。

この秋から生徒会の役員になった。役員選挙に出て当選し、憧れの女子生徒会副会長になれたのだ。

忙しく過ぎていく毎日。気付けば役員に任命されてから2ヶ月が経っていて、役員としての自覚も出てきたところ。

それはきっと他の役員になった人も同じだろうと思っていた。だけど、いつも提出物の期限を守ってくれない人がいた。

それは美化委員長の 松倉 (せい) くんだ。


今までは期限を守らなくても、次の日には必ず出してくれたから良しとしていた。だけど期限というのは守るためにあるものだ。

そろそろ松倉くんとちゃんと話をしないといけないと思い、今日は探しに来たのだ。

しかし探しに来たのは良いものの、初めて訪れる弓道場を前にして、どうしたらいいのか考えていた時のことだった。


「あれ…、橋本さん?」

「あ、松倉くん!探していたんだ」

後ろから名前を呼ばれ振り向くと、その声の主はまさに私が探していた人物だった。

こうして二人きりで話すのは初めてだからか、目を丸くしてこちらを見ている松倉くん。

そんな弓道部の松倉くんは既に道着に着替えており、初めて見る彼の道着姿は、制服の時の印象とはガラッと変わって、とてもかっこよかった。