その瞬間、忘れたことも忘れていた記憶が流れ込んできた。

それは、リエと小学校卒業と中学校入学のお祝いでカラオケに行った帰り道のこと。

信号を渡っているとき、赤信号を無視したトラックが私たちの方にまっすぐと向かって来るのが見えた。

トラックの運転手は手にスマホを持っていた。

リエが叫ぶ。

その声に我に返ったトラックの運転手は目の前に電柱があることに慌てて、ハンドルを右にきった。



リエのいる方に……。



運転席からは私たちが見えていなかったのだ。

私はそのとき、リエの腕を引いて助けることもできた。

むしろ、そうするべきだった。