ふと視界の先に白いワンピースを着た少女が映った。

手に黒い球体を持ち、それを引きずり歩いている少女は何かを探しているようにときどきキョロキョロとあたりを見回している。



あの人が"りっちゃん"だ。

そう悟った。



下手に動くと見つかりそうな距離にいる。

ズルズルズルと球体を引きずる音が響く。

とりあえず近くの物陰に隠れて"りっちゃん"が遠くへ行くように祈る。

心臓が不協和音を奏でて暴れ狂っている。



お願い。気づかないで・・・・・・。



恐怖で手足が震える。

震えを抑えようとその場にしゃがむ。

顔を上げられない。



ずいぶん時がたった気がする。

静かになった。

ズルズルという音も、もう聞こえない。



助かった。



「はぁー。」

安堵の溜息と共に顔を上げる。