「…ありがとう」
1人で震えていた自分が、何だかとても弱い人間のように思われた。
口元が緩む。
「逃げてごめんね」
「…ほんとはちょっと怒ってる」
“逃げるな”と叫ぶ棗の声。
痛感したのは彼等の優しさ。
私がどれだけ甘く、彼等に生かしてもらっていたのか、ということ。
あの日
その声から冷たく目を逸らした私も、紛れもなく私だった。
「…けど」
「…うん」
「“大好きだ”って言っただろ。お前」
「……うん。言ったね」
大好き。この世の何より。
此処を離れて、より深くなった思いだった。
本心だった。
狼が
こいつらが
今だって、大好きで仕方ない。
「本心だよ」
「…ん」
「誤解されてちゃ困るから言うけど」
棗の頬を、今度は私が包み込む。
───私、円堂芹那は
「君たちが大好きです」
「…わあお」