明石 周、営業部第一グループ主任。
東京都出身、3月生まれで年齢は33歳らしい。
そしてどうやら独身…
会社の無人の休憩スペースで、今までほとんど読んでいなかった社内報のバックナンバーを見ながら香魚子は溜息を吐いていた。
年に一回発行される社内報のその号は、営業部特集だった。明石のプロフィールも掲載されている。
(何やってんの、私…)
———ハァッ
大きく一回息を吐くと、手帳とペンを取り出した。
(明石さんのこと考えて変になってるより、褒めてもらえたデザインを考える方が良いに決まってるじゃない。)
サラサラとペンを走らせる。
(ミルフルールの企画は無くなってしまったけど…お花のシリーズはいつかやりたいよね。シーズン毎に違うお花で…春は…桜は定番だけど、チューリップ…タンポポとかも大人っぽくしたら新しい雰囲気でかわいいかも…)
デザインモードのスイッチが入ったかのように、周りが見えないくらいイメージスケッチに没頭していく。
「いいね、それ。チューリップ?」
ふいに、至近距離から話しかけられて香魚子はフリーズした。香魚子の座っているテーブルの向かいの席に明石が座っていた。
———ガタッ
間を開けて、香魚子の椅子が音を立てた。香魚子が思わず後ろに退いたせいだ。
「え、え、いつから…!?」
慌てる香魚子に明石はハハハッと大きく笑った。
「今だけど。コーヒー買いに来たらなんか描いてる人がいるな〜って。そんな驚く?」
「ごめんなさい、私たまに周りが見えなくなっちゃうんです!人がいると思わなかったから!」
心臓がバクバク鳴っている。
「知ってる。何度かそういうとこ見たことあるから。」
「へ…?」
「それよりさ、これってミルフルールの新しいデザイン?」
明石は、香魚子が手帳に描いたスケッチを指差した。
東京都出身、3月生まれで年齢は33歳らしい。
そしてどうやら独身…
会社の無人の休憩スペースで、今までほとんど読んでいなかった社内報のバックナンバーを見ながら香魚子は溜息を吐いていた。
年に一回発行される社内報のその号は、営業部特集だった。明石のプロフィールも掲載されている。
(何やってんの、私…)
———ハァッ
大きく一回息を吐くと、手帳とペンを取り出した。
(明石さんのこと考えて変になってるより、褒めてもらえたデザインを考える方が良いに決まってるじゃない。)
サラサラとペンを走らせる。
(ミルフルールの企画は無くなってしまったけど…お花のシリーズはいつかやりたいよね。シーズン毎に違うお花で…春は…桜は定番だけど、チューリップ…タンポポとかも大人っぽくしたら新しい雰囲気でかわいいかも…)
デザインモードのスイッチが入ったかのように、周りが見えないくらいイメージスケッチに没頭していく。
「いいね、それ。チューリップ?」
ふいに、至近距離から話しかけられて香魚子はフリーズした。香魚子の座っているテーブルの向かいの席に明石が座っていた。
———ガタッ
間を開けて、香魚子の椅子が音を立てた。香魚子が思わず後ろに退いたせいだ。
「え、え、いつから…!?」
慌てる香魚子に明石はハハハッと大きく笑った。
「今だけど。コーヒー買いに来たらなんか描いてる人がいるな〜って。そんな驚く?」
「ごめんなさい、私たまに周りが見えなくなっちゃうんです!人がいると思わなかったから!」
心臓がバクバク鳴っている。
「知ってる。何度かそういうとこ見たことあるから。」
「へ…?」
「それよりさ、これってミルフルールの新しいデザイン?」
明石は、香魚子が手帳に描いたスケッチを指差した。