「ケーキのイラストは4年前、クマのイラストは2年前に発売したバースデーカードと同じものを使っているようですが、何故ですか?」

周の質問に会場が(ざわ)つく。
(え……?)
香魚子も周の質問内容にも、周がこの場でその質問をすることにも驚いていた。
しかし、鷲見は思いの(ほか)冷静に答えた。
「えっとぉ…私って、他の子たちと違っていろいろな商品のデザインをしなければいけないので、全部の商品に対して描き下ろししてる時間がないのよね〜。使い回しって言われたらあれだけど、他で使って好評だったイラストを使うなんて、よくあることよね。時短てやつ?」
「つまり、鷲見さんは売れっ子だから忙しくて時間がない…ってことですか?」
周が聞いた。
「ん〜まぁ、嫌味っぽくなっちゃうけどー、そういうこと。」
周はマイクを口元から外して小さな溜息を()くと、再びマイクを持った。
「営業が、店の人からなんて言われてるか知ってますか?」
「え?」
「“またこのイラスト?” “前にも見たことある” “手抜きじゃない?”鷲見さんの新商品持ってくたびにこの質問されますよ。」
「売れっ子で忙しいから仕方ないと、本人が言ってるだろ。」
周の言葉に苛立った目白が割って入ったが、周は続けた。
「店の人にそう答えるんですか?そんなに忙しいなら、他のデザイナーに描かせたらいいじゃないですか。今日のプレゼン、鷲見さん以外の方は全員全て描き下ろしのデザインですよ。彼女たちだって他に業務をこなしているはずですが?」
「いや明石くん、しかしねぇ…」
今度は企画部長の鷹谷(たかや)が口を開いた。