「なんでミモザなんですか?」

周の質問はシンプルだった。
突然の質問に動揺した香魚子だったが、すぐに冷静になった。
(…これは…「明石さんのためです!」みたいな答えが欲しいわけじゃないよね。)

「ミモザは、私が一番好きな花です。」
香魚子は続ける
「好きな理由はいろいろありますが、黄色くて小さな丸い粒が可愛くて、見ていると元気になります。ミモザをバースデーカードにした理由の一つは、店頭で選ぶお客さんにも、その人が贈った相手にも元気になってほしいからです。」
周は香魚子をじっと見ている。
「それから…ミモザにはいくつか花言葉があるんですが、ミモザが親しまれているイタリアでの花言葉は「感謝」だそうです。バースデーカードって誰かの幸せな気持ちを乗せる(うつわ)だと思うんです。私はそこに、大切な人に「生まれてきてくれてありがとう」「そばにいてくれてありがとう」って、感謝も乗せられるようにしたいなと思いました。それがミモザを選んだ理由の二つ目です。…以上です。」
周は香魚子を見て微笑んだ。
「福士さん、ありがとうございました。」
周が言うと、香魚子はぺこりとお辞儀をして発表を終えた。