「ところで私も見たいな〜福士さんのデザイン。最高のデザイナーが入るから絶対経理やってくれ〜って言われたんだけど?」
席に戻った樅内が言った。
「ああ、そっか、正式に決まる前だったから見せてなかったっけ。スマホに入ってるやつなら見せられるけど…」
「あ、私タブレット持ってます。」
香魚子がタブレットを取り出した。
「そういえば、この間描いてたやつって完成した?」
「この間…あ、はい。完成したので見せられます。」
(周さんだけに最初に見せたかった気もするけど…)
香魚子は周の家で描いていたデザインを開いた。
「えっと…ミモザのバースデーカードなんですけど…」
白地にミモザのブーケのものと、紺地にミモザのリースをあしらった2種類のバースデーカードを見せた。
三人からは何の声も上がらない。
「…えっと…?もしかしてダメだったでしょうか…?」
「…すごい…超きれー!」
最初に言葉を発したのは樅内だった。
「紺色の方、すごく良い!旦那の誕生日に使いたい〜!えー!もうこれ商品化決定でしょ!」
樅内はテンションが上がっている。
「相変わらずすごいね。」
柏木も目を輝かせている。
「………。」
周だけがなかなか言葉を発しない。香魚子は他の誰よりも周の反応が気になる。
「あま…明石…さん?ダメでしたか?」
香魚子の言葉に周はハッとした。
「いや、めちゃくちゃ良い。今までで一番くらい…さすがだと思う…」
周の言葉に香魚子はホッと胸を撫で下ろした。
「でもなんでミモザなの?」
樅内が聞いた。
「あ、それは…」
「あ」
香魚子が答えようとすると、周も口を開いた。
「そうだ、今日はこれを言おうと思ってたんだった。社名決めたんだ。」
「え、ちょっとミモザの話は〜?」
「まあちょっと待って。」