会計を終えて—というよりも気づいたら明石が支払いを終えていたのだが—二人は店を出た。
「あの!今日は自分の分払います!それとこの前のタクシー代も…」
「いいから。誘ったのも俺だし、タクシー乗せたのも俺だから。」
「でも…」
「代わりにちょっと酔い醒ましに散歩付き合って。」
「はい…」
二人が“散歩”に訪れたのは、大きな河沿いの遊歩道だった。
夏も終わろうとしている夜、どこからか虫の声が聞こえ始めていた。
「今、仕事忙しい?」
歩きながら明石が聞いた。
「JSOTのクロージングをしたところなので新商品はいっぱい発売しますけど、サンプル用に作ったデータがそのまま使えるのでそんなに忙しくはないです。あ、今度バースデーカードのコンペがあるみたいですが…」
「そっか。」
「明石さん、あの…」
香魚子は立ち止まった。
明石も立ち止まって、香魚子の方を向いた。
「この間の…えっと…えっと…」
「ゆっくりでいいよ。落ち着いて。」
———スーハーッ…
香魚子は小さく深呼吸をした。
「えっと…まず…決めたんですけど…会社は辞めることにしました。あの会社にこれ以上いても自分にプラスにならないと思うので。」
「うん。」
「それで…明石さんの会社のことなんですけど…」
「………」
明石は黙って聞いている。
「…明石さんの会社には入れないです…。」
「あの!今日は自分の分払います!それとこの前のタクシー代も…」
「いいから。誘ったのも俺だし、タクシー乗せたのも俺だから。」
「でも…」
「代わりにちょっと酔い醒ましに散歩付き合って。」
「はい…」
二人が“散歩”に訪れたのは、大きな河沿いの遊歩道だった。
夏も終わろうとしている夜、どこからか虫の声が聞こえ始めていた。
「今、仕事忙しい?」
歩きながら明石が聞いた。
「JSOTのクロージングをしたところなので新商品はいっぱい発売しますけど、サンプル用に作ったデータがそのまま使えるのでそんなに忙しくはないです。あ、今度バースデーカードのコンペがあるみたいですが…」
「そっか。」
「明石さん、あの…」
香魚子は立ち止まった。
明石も立ち止まって、香魚子の方を向いた。
「この間の…えっと…えっと…」
「ゆっくりでいいよ。落ち着いて。」
———スーハーッ…
香魚子は小さく深呼吸をした。
「えっと…まず…決めたんですけど…会社は辞めることにしました。あの会社にこれ以上いても自分にプラスにならないと思うので。」
「うん。」
「それで…明石さんの会社のことなんですけど…」
「………」
明石は黙って聞いている。
「…明石さんの会社には入れないです…。」