残業の合間、香魚子は休憩スペースで手帳にスケッチをしていた。
「遅くまでおつかれさま。」
明石だ。
「おつかれさまです。そう言う明石さんも残業ですか?」
「まぁね」と言いながら、香魚子の座っているテーブルに明石も腰を下ろした。
「最近、企画デザイン部遅くまで残ってるよね。JSOTの準備?」
「はい、すごく忙しくなってテンパってます…。」
「なのにそれ、新しいデザイン?」
香魚子の手帳に目をやった。
「休んだ方が良いんじゃない?」
「いえ…あの…」
「ん?」
「私、デザインでストレスが溜まると、デザインで発散したくなるんです。」
明石は香魚子の発言に、一瞬呆気にとられたような表情になった。
———ハハッ
そして、笑った。
「すごいね、福士さんらしい。」
「やっぱりひきますよね…なんかすごく恥ずかしいです…。」
「ごめんごめん、恥ずかしいことではないよ。本当にデザイナーが天職なんだね。今描いてるそれって俺は見られるの?」
「……はい。」
香魚子はすっかり明石に見せることを前提にデザインするようになっていた。直接見せることもあれば、LIMEで送ることもある。
その度に明石は真剣に見て、丁寧に感想とアドバイスをくれた。メッセージでの返信の場合もあれば、先日のように電話で感想をくれる場合もあった。
しかし、ここのところ仕事では全くと言っていいほど自分のデザインができていないため、明石が応援してくれることと自分の実力との間の気持ちのギャップを埋めるのが難しくなっていた。
「とにかくあんまり無理しないで。」
「…はい、ありがとうございます。」
「JSOTって企画デザイン部もみんなブースに立つでしょ?福士さんの当番の日って決まってるの?」
「はい、えーっと…設営の日と最終日です。」
香魚子は手帳を捲りながら答えた。
「ちなみに営業は3日間毎日いるから、最終日よろしくね。」
「よろしくお願いします。営業さんと違って接客は慣れてないのでちょっと緊張します…。」
(明石さんがいるのは楽しみだけど、展示される担当商品に全然納得できてないからちょっと憂鬱だな…。)
香魚子は仕事のストレスから、今まで以上に明石に見せるデザインに没頭していった。
自分の存在価値がそこにしかないとでもいうかのようにペンを走らせた。
明石のこと、鷲見と商品デザインのこと、川井のこと、いろいろなことが頭を過った。
「遅くまでおつかれさま。」
明石だ。
「おつかれさまです。そう言う明石さんも残業ですか?」
「まぁね」と言いながら、香魚子の座っているテーブルに明石も腰を下ろした。
「最近、企画デザイン部遅くまで残ってるよね。JSOTの準備?」
「はい、すごく忙しくなってテンパってます…。」
「なのにそれ、新しいデザイン?」
香魚子の手帳に目をやった。
「休んだ方が良いんじゃない?」
「いえ…あの…」
「ん?」
「私、デザインでストレスが溜まると、デザインで発散したくなるんです。」
明石は香魚子の発言に、一瞬呆気にとられたような表情になった。
———ハハッ
そして、笑った。
「すごいね、福士さんらしい。」
「やっぱりひきますよね…なんかすごく恥ずかしいです…。」
「ごめんごめん、恥ずかしいことではないよ。本当にデザイナーが天職なんだね。今描いてるそれって俺は見られるの?」
「……はい。」
香魚子はすっかり明石に見せることを前提にデザインするようになっていた。直接見せることもあれば、LIMEで送ることもある。
その度に明石は真剣に見て、丁寧に感想とアドバイスをくれた。メッセージでの返信の場合もあれば、先日のように電話で感想をくれる場合もあった。
しかし、ここのところ仕事では全くと言っていいほど自分のデザインができていないため、明石が応援してくれることと自分の実力との間の気持ちのギャップを埋めるのが難しくなっていた。
「とにかくあんまり無理しないで。」
「…はい、ありがとうございます。」
「JSOTって企画デザイン部もみんなブースに立つでしょ?福士さんの当番の日って決まってるの?」
「はい、えーっと…設営の日と最終日です。」
香魚子は手帳を捲りながら答えた。
「ちなみに営業は3日間毎日いるから、最終日よろしくね。」
「よろしくお願いします。営業さんと違って接客は慣れてないのでちょっと緊張します…。」
(明石さんがいるのは楽しみだけど、展示される担当商品に全然納得できてないからちょっと憂鬱だな…。)
香魚子は仕事のストレスから、今まで以上に明石に見せるデザインに没頭していった。
自分の存在価値がそこにしかないとでもいうかのようにペンを走らせた。
明石のこと、鷲見と商品デザインのこと、川井のこと、いろいろなことが頭を過った。