わたしはこんな人たちなんて知らないのに、どうしてわたしの名前を…。


しばらく黙り込むわたしに対して、バイクの男の人が痺れを切らす。


「向坂慈美かって聞いてんだよっ!!」


突然の怒鳴り声に驚いたわたしは、とっさに首を縦に振ってしまった。


「そうか」


バイクの人はそれだけつぶやくと、周りのバイクに跨っている人たちに視線を送る。

なにかの合図なのか、周りはそれに対してうなずいている。


「悪いが、あんたを攫ってくるように頼まれてるんだ」

「わっ…わたしを!?一体、だれに…!?」

「聞いてどーする。あんたには関係ねぇよ」


そう言って、男の人はわたしの腕をつかむ。

それに必死に抵抗しているとき、ふと脳裏に由奈の言葉を思い出した。


『とにかく、マイ先輩ならなにしてくるかわからないから、しばらくは気をつけたほうがいいよ…!』