「だって、わたし…」

「俺はべつに、なにも気にしてねぇよ」


耳元で、彪雅がささやく。


「…そんなはずないよっ。彪雅の大事なファーストキスをわたしが――」

「むしろ、慈美になら何度だってくれてやるよ。俺のキスでよければ」


そう言って、彪雅はわたしの耳たぶにキスをした。

不意打ちのキスに、わたしの体は反射的にピクッと反応する。


「…かわい、慈美」

「もう…、からかわないでっ…」


わたしは、こんなにも彪雅にドキドキしてしまっているのに、彪雅はわたしと違って余裕の笑みを浮かべている。


そして、彪雅はある提案をしてきた。


「…じゃあさ。俺のファーストキスを奪った責任取ってよ」

「せ…責任?」


そんなことを言われると、いきなりその『責任』という言葉が重くのしかかってきた。