わたしはそんな彪雅を、涙をいっぱいに溜めた目でにらみつける。


「…ファーストキスだったんだな。その相手がこんな俺で…悪かった」

「謝るくらいなら、…なんであんなことっ」

「…突然あんな状況だったら、そりゃびっくりするよな」


彪雅は眉を下げ、肩を落とし、まるで飼い主に叱られてしょげている子犬のようだった。


しかし彪雅は、そのあとに「でもな」と続ける。


「さっきのあれ…。ファーストキスじゃねぇんだよ」


その言葉に、わたしは一瞬ポカンとした。


ファーストキスじゃ……ない?


…え?

でも、そんなはずがない。


だって、わたしはこれまでで男の人と一度もそういうことになったことがないから…。

さっきのが、正真正銘のファーストキスだよ。


彪雅、なに言って――。


「正確に言うと、さっきのは…『セカンドキス』かな」