「そういえば、このアジトへ入るとき、なんでわたしの頭の上に上着を被せたの?」


それで前が見えなくて、わたしはこのアジトの雰囲気がわからなかった。

上着が取り払われたときには、すでに彪雅の部屋にいたから。


「…まぁ、とくに意味はねぇよ。気にするな」


彪雅はぶっきらぼうにそう言うと、ペットボトルに入ったミネラルウォーターを飲み干した。


「慈美も、冷蔵庫のもの適当に飲んでいいから」

「あ…うん、ありがとうっ」


彪雅が濁した返事が少し気になったけど、わたしは冷蔵庫からレモンの缶ジュースを手に取ると、プシュッと音を立てて栓を開けた。



こうして、わたしはしばらくの間、このONEのアジトの彪雅の部屋でお世話になることになった。


もし、またMiLLiONに見つかって、家を特定されてしまっては、おじさんとおばさんにまで迷惑をかけてしまう。