路地の出口に、1台のバイクの影が見えた。


そして、バイクに跨っていた男の人が降りてきた。

コツコツと、ブーツの音が路地に響く。


わたしは、とっさにもときた道を後ずさりした。


なぜなら、前からやってくる男の人はフルフェイスを被っている。

そして、そのヘルメットの隙間から見えるのは――銀髪の襟足。


…あいつだ。


最近見かけないと思っていたけど、間違いなく、わたしの行くところ行くところに姿を見せていたバイクの運転手だ。


ゆっくりと歩いてくる相手に対して、わたしは背中を向けるとすぐに走り出した。


やっぱり、こんな路地なんかに入るんじゃなかった…!


路地を抜け、いつもの通りに出ればっ…。


そう思い、必死に路地の入口に向かって走る。


――しかし。


わたしが入ってきた路地の入口にも、複数のバイクの影が現れた。