昼休みの間に持参したお弁当を持って、また午後の練習が始まる。そこから、夜の六時前に終わり次第、西南中央駅近くにある塾に行く。
 依田家は西南駅から徒歩十分。春の台中学に通うとしたら、車を使わないといけない。
 塾や習い事に行くのは影響ないが、学校に通うとなれば難しい。冬休みの間ならできそうだが、結局部活もあるので、家に残らないといけないだろう。
「学校のこと考えたら、このまま私は残らないといけないですね」
 陽鞠は肩を落として悠真の方へ視線を向ける。
 規則正しい寝息が聞こえる。

 本当に休んでほしい。
お父さんもうお母さんと別れて。
このままだと死んでしまう。
「……父はどれぐらい働いてたんですか?」
「うーん、それは勤務記録見ないとなぁー。前々から無理して働いてる所あったって話をチラッと聞いたね。戸塚くんがお父さんと親しいから聞いてみるね。で、お母さんから連絡はきてる?」
 陽鞠はスマホの通知画面を見てため息をついた。
「一体何してるんだか。電話の一本ぐらいして欲しいもんだ。自分の要求ばかりだけでなく」
 その瞬間、陽鞠のスマホに着信表示がでた。
 陽鞠は病室から出て病院の入り口に立つ。
「お母さん? 今どこ?」
『後で向かうから、もう少し待ってて』
「早く来てよ」