「確かに俺はお母さんと結婚した。盲目的だったし、自己保身や現状維持に走って、陽鞠を苦しめたかもしれない。陽鞠はお母さんと結婚した俺に謝れというのかい? それこそ、陽鞠が普段から嫌ってるお母さんの"被害者気質”や"悲劇のヒロイン"じゃないか。同じ轍を踏まないと決めてるんだろ? しっかりしろ」
 陽鞠は父からの厳しい指摘に唇をかみしめる。

 分かってる! 分かってる!
 そうならないように、やってきた。
 前を向いてやろうと思った。
 非常識な親の娘という枕言葉をなくすために。

「陽鞠ちゃん。お父さんの言うとおりよ。悲劇のヒロインになりたくないなら、あの人の用になりたくないなら、この法廷をしっかり見て。法が決めるんだから。そこから今後の動きを決めればよろし。あの人に厳罰を望む気持ちは分かる。今まで報いを受けても全く学習しなかったね。よくも悪くも変わってない。さすがあの母の血を色濃く受け継いでいる。りょう兄が見たらもっと毒吐いてたよ」
 良輔は「呉松結花という人間は、そもそもうちにいない。ただの騙りだろ」と切り捨て、傍聴に行かなかった。

 法廷で結花の言動や行動に言葉を失っても気にする素振りがなかった。

 ゆいちゃんの可愛さにみんな釘付け? やっぱそうでなきゃ。